こんにちは、腹筋がカニの裏の人(プロフィールはこちら)です。
ボディビルの大会では順位が付き、表彰台に立つ人が決まります。 ボディビルは明確に順位がつく競技です。だからこそ、優勝を目指して努力するのは当然のことです。 しかし、“勝利”とは本当にそれだけのことなのでしょうか?
どれだけ仕上がりが完璧でも、観客の心に残らなければ、それは勝利と言えるのか。 逆に、順位に届かなくても、誰かの心を動かし、大会を盛り上げる存在になれたなら―― その人こそ、本当の意味での“勝者”ではないのか。
今回はそんな想いから、「ボディビルの本当の勝者とは誰か?」というテーマで、 順位の意味、勝利の本質、そしてボディビルという競技のあり方について考えてみたいと思います。
順位は「勝利」を示すものなのか?
ボディビルは、はっきりと順位がつく競技です。 そして、その順位は「評価の高さ」を示すもので、 優勝者が“勝者”、2位以下は“敗者”というのが一般的な構図です。私もそれ自体は否定しません。
ただ、問題はそこに“意味のすべて”を置いてしまうことです。 順位だけを目的化してしまうと、結果が思うように出なかった時、 自分を否定してしまったり、努力の価値まで見失ってしまったりする。 その状態こそが、ボディビルを「苦しいもの」にしてしまう原因なのではないでしょうか。
だからこそ、発想を少し変えてみる。 順位は“絶対的な勝敗”ではなく、 野球の「打点ランキング」や「ホームランランキング」ぐらいに考えてみるのです。 チームが勝つことが第一目標だけれども、個人タイトル(=順位)にもきちんと意味がある。 そう考えると、ボディビルの順位も少し違って見えてくるはずです。
では、第一目標である“チームの勝利”とは、ボディビルでは何を意味するのでしょうか?
ボディビルは個人競技に見えて団体競技である
ボディビルという競技は、一見すると完全な個人競技です。
一人ひとりが列に並び、同じポーズを取って優劣を競う。
しかし、実際に大会を経験してみると、それだけでは語れないことがわかります。
大会当日では、選手たちは互いを尊重し、同じ舞台を作り上げています。ステージ裏では互いに励まし合い、刺激を与え合う。その関係性を、ボディビルとは「一人で戦う競技」ではなく、「全員で大会を成功させる団体競技」と位置付けるのです。
そして、ここに他のスポーツとの決定的な違いがあります。
多くの競技は、選手同士が互いに向かい合い、相手を倒すことで勝敗が決まります。しかし、ボディビルでは全員が”同じ方向を向いて“戦っているのです。そして選手たちの視線の先には、審査員や観客がいます。つまり、ステージに立つ全員が共に戦う仲間であり、共通の視線の先にある審査員を唸らせ、観客を魅了することが共通の目標となるのです。

つまり、私たちの本当の“敵”は他の選手ではなく、審査員や観客の心を動かすという課題そのもの。出場者全員でその高い壁に挑むことが、ボディビルを団体競技としてとらえた時の目標なのだと思います。
本当の勝利とは「大会を成功させること」
この「団体競技」という考え方をさらに広げてみると、大会の“勝利”とは、選手だけでなく、司会、照明、音響、スタッフ、そして観客を含めたすべての人が「この大会は素晴らしかった」と思えることだと思います。
照明が筋肉を美しく照らし、音響が躍動感を際立たせ、司会や歓声がステージを盛り上げる。その全員の調和が生まれたとき、ボディビル大会はひとつの「芸術作品」として完成します。つまり、ボディビルは個人の競技でありながら、究極のチームプレイでもあるのです。
大会が終わったあと、関わった全員が「最高だった!」と思えたなら、それが本当の“勝利”。その瞬間、順位は単なる数字に過ぎなくなると思います。
まとめ:順位に意味を与えるのは、私たち自身である
順位は数字で表される一つの結果にすぎません。しかし、その順位にどんな意味を見出すかは、自分次第です。観客に感動を与えた選手は皆が勝者であり、大会を支えた人も、仲間を励ました人も、その場の全員が大会を成功させたのなら、それが“真の勝利”です。
もちろん、ボディビルは競技スポーツです。ですから、優勝を目指すのは当然のことですし、優勝を目指して”本気”で挑戦するからこそ、そこに意味や価値があると思います。
ただし、それ“だけ”に価値を求めてしまうと、この競技の本質を見失ってしまうのではないでしょうか。順位を超えて、どれだけ人の心を動かせたか――その視点を持つことで、ボディビルはより深く、そして豊かなものになると私は思います。
もし、ボディビルが苦しいものになってしまったときは、少しだけ発想を変えてみてください。
順位を“絶対的な勝敗”としてではなく、野球で言う「打点ランキング」や「ホームランランキング」くらいのものとして捉えてみるのです。
その日の評価として受け止め、次の挑戦につなげればいい。そう思えたとき、ボディビルはまた楽しさを取り戻し、あなたを前に進ませてくれるはずです。
ボディビルは個人の競技に見えて、実は共同体の芸術。そして、順位とはその芸術の中で光る「記録」である。だからこそ、私たちは結果のみに縛られず、“大会を通じて誰かの心を動かせたか”という視点で、勝利の意味を考えていけたら良いのではないでしょうか?
【ボディビル哲学シリーズ】
こちらではボディビルを通して人生とは何かを考える「哲学」シリーズを展開しています。
👇【第1回】大会に出る意味と目標の持ち方
👇【第2回】絞りの美学-小さな正解を積み上げる技芸
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