【ボディビル哲学シリーズ 第1回(全5回予定)】
「大会に出る意味」や「目標設定」について−今年の挑戦を通じて改めて考えてみました。
今年の私は、最近、私の中で芽生えてきたボディビルの美学 ”究極の絞り” をテーマに、「誰よりも絞り切る」ことを目標に東京選手権に出場しました。
今年の減量方法については以下の記事で紹介しているので参考にどうぞ。
結果は10位と成績を大きく落としてしまいましたが、その目標は達成できたと感じています。
一方で、やはりそれが必ずしも結果(順位)に直結しなかった事実は、私自身のモチベーションや目標設定を見直すきっかけにもなりました。
東京選手権での挑戦 ― 「誰よりも絞る」を掲げて
今年は、結果(順位)を追う姿勢を持ちながらも、明確なテーマとして「誰よりも絞ること」を掲げて準備を進めました。減量の徹底、コンディションの最適化、当日の仕上がりの精度――自分にできる管理は可能な限りやり切ったつもりです。ステージ上での手応えもあり、テーマとしては達成感がありました。
しかし、結果としては自分の期待と一致しなかった部分があります。「絞れている」ことと「勝てる」ことは似て非なるものであり、審査全体の評価軸の中ではアウトラインのサイズ、厚み、全体のバランス、ポージングの表現力など、総合力が問われます。この体験は、私にとって目標の置き方をもう一段深く考える契機になりました。
目標達成の先に訪れた燃え尽き感
興味深いのは、「結果(順位)以外のテーマ」を強く掲げた場合、そのテーマを達成した瞬間に次の大会へのモチベーションが急速に低下し得るということです。
私の場合、東京選手権で「絞り」のテーマをやり切ったことで、次の大会に向けた気持ちが思った以上に伸びませんでした。これは、テーマ設定の妙でもあり、落とし穴でもあると感じています。
「一つの大会で完結してしまう目標」を中心に据えると、達成後に余白が残らず、連戦に向かう内的エネルギーが自然と落ちやすくなる。ここには、目標設計のレイヤー(短期の到達目標と、中長期の発展目標)の分け方が重要だと感じました。
私の知り合いも、昨年、世界選手権に出場することを目標にしていましたが、それが達成できたことで「燃え尽き症候群」の症状が起きたと話していました。
やっぱり「結果」を目指す意義と、限界との付き合い方
複数の大会に挑み続けるモチベーションを持続させるには、最終的に「結果」を目標に据えることが有効だと感じます。
結果を目指す過程では、サイズ・厚み・シルエット・バランス・表現力など、順位に直結する要素に焦点が当たり、準備全体が「総合力の底上げ」に統合されます。その統合感が、長いシーズンの中でモチベーションの軸を保ちやすくします。
ただし、「結果だけ」を追い続けることにはリスクもあります。心身の消耗、シーズン中の視野狭窄、自己肯定感の乱高下など、限界と向き合う局面は避けられません。
だからこそ、結果以外の目標も同時に立てることで心身のバランスを保つことが重要だと思います。
また、オフシーズンには回復を最優先し、種目の精査やボリュームの再設計、弱点強化の計画などを通じて、挑戦と回復のリズムを丁寧に整える必要があると考えます。
「絞り」という強い美学について
今年の東京選手権では「誰よりも絞る」というテーマを掲げました。なぜなら、ここ数年の自分の中で「ボディビル=絞り」こそが最も強い美学だという考えが芽生えてきたからです。
ボディビルには大きく「バルク」と「絞り」が審査基準とされます。
バルクに関しては本人の努力はもちろん必要ですが、遺伝子や年齢、骨格など、本人にはどうにもコントロールできない部分に恵まれているかどうかが大きな要素になります(特に全国大会など高レベルな大会になるほど、その傾向は高いと考えます)。
一方、絞りという要素は、努力とコントロール次第で誰もが到達できる可能性を持ち、そこにこそ競技者の人間性や歩んできた過程、生まれながらの素質に頼らない人間としての”強さ”が滲み出る部分だと感じています。私にとって、それは単なる仕上がりの一部ではなく、競技そのものの価値を大きく上げる要素なのです。
この「絞りの美学」については、別の記事でより深く掘り下げていきたいと思います。
これからの目標の置き方 ― 次に挑戦したいこと
私が次に目指したいのは、「結果に直結するテーマ」を掲げつつ、短期・中期・長期の三層で目標を設計することです。
- 短期:日々のトレーニングを淡々と継続する。
- 中期:胸や背中などの弱点部位を中心に、筋量の回復と厚み強化に取り組む。
- 長期:競技との付き合い方を柔軟に見直しつつ、挑戦と回復のバランスを保つ。
「絞りの美学」は私の中で確かな核として残しながらも、順位に響く総合力を鍛え直す――この二つを両立させていくことが、次の挑戦につながると感じています。
まとめ
「結果だけではない」
競技の世界ではよく謳われる常套句です。
結果以外のテーマは、確かに私たちに新しい視点や学びを与えてくれます。
しかし、複数の大会に挑み続けるための持続的なモチベーションは、やはり「結果」を目指す過程で最も強く育つのだと、私は今年の経験から実感しました。
だからこそ、これからは「結果に直結するテーマ」を掲げつつ、「絞りの美学」を自分の中の核として磨き続けていきたいと思います。
また、9/7(日)には日本クラス別ボディビル選手権を控えていますが、「絞り」と「結果」という2つの目標をバランスよく保ちながら楽しんでステージに挑みたいと思います。
【予告|ボディビル哲学シリーズ(全5回予定)】
第1回:大会に出る意味と目標設定(本記事)/ 第2回:ボディビルにおける「絞りの美学」――努力が見せる品位と物語/ 第3回:結果を追い続けることの限界とリスク/ 第4回:肉体を削る先に見えるもの――苦しみと喜びの両面/ 第5回:ボディビルが教えてくれる人生哲学と幸せの形
コメント